(リ)コンディショニングメモ

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歩行 実習関連 考え方

トレンデレンブルグ歩行は中殿筋の筋力低下が原因?

2018/08/23

はじめに

スポーツ、トレーニング、臨床など、それらの能力を向上させる上で不可欠なことは何かを考えると、「実際に経験すること」だと言えます。当たり前と言えばそうですが、知識を得ることや運動イメージを活用することも、その能力を向上させる要素のひとつです。

しかし、知識を得たとしても、それをどのように活用するか、汎化させるかとったことを考えると、実際の経験が必要になります。運動イメージも同様に、類似した運動や全く経験したことのない運動をイメージすることは困難と言えます。

実際の臨床から得られるもの

例えば、理学療法士の養成校における臨床実習は、臨床における一部の経験を通じて、知識や基本的な技術を、対象者に合わせてどのように活用するか、対象者に適切な介入をするために必要な知識や技術は何かを考える機会になると思います。

様々な対象者がいるわけですから、一筋縄ではいきませんが、その中でも普遍的な何かに気づくことが出来れば、いわゆる原理原則を意識して知識や技術を学ぶことが出来るかも知れません。そうすることで臨床において知識や技術をより適切に活用する、つまり適応させる能力が高まるかも知れません。

また、知識や技術から考えるのではなく、そもそも目的は何かを明確にして、対象者の状態や状況に応じて介入方法を考えることで、発想力が養われてくるかも知れません。もちろんこういった作業は、学生1人で出来ることは限られているので、バイザーや教員がサポートしていくことだと思います。

こういったことは、学生に限ったことではありませんが、既に臨床をしている側として学生(実習生)の取り組みを見習うこともあると思います。見習うというより過去にしたことですが、それはデイリーノートやケースレポートです。

デイリーノートやケースレポートを作成すべきという意味ではなく、無意識のルーチン化を防ぐためにも、日々振り返ること、次の臨床に向けての作業が重要だと感じます。毎日のカルテの確認やカルテ記載といった業務の中で、臨床する上での思考や必要に応じて調べる作業がありますから、それがその役割を担っている部分もありますが、補足作業が必要なこともあると思います。

学生にしても、デイリーノートやケースレポートを作成すること自体が目的というわけではありません。それを作成することが目的となって体裁を整える作業になったり、それによって睡眠不足に陥るのであれば本末転倒です。

何を勉強したら良いですか?

以前の職場でも業務の立場上、「何を勉強したら良いですか?」という質問を受けることがありましたが、今現場でしている指導を振り返ってみることから始めることを提案していました。

言葉では簡単ですが、その時はそれで良いと考えていることもあるので、振り返ったところで何も気づかないこともあると思います。ですから、「そう言えば、それで本当に良いのかな?」と考えるきっかけが必要かも知れません。

そういう意味でも、様々な視点や考え方に触れる、新たに知識や技術に触れることは必要だと思います。しかしながら、「あまり関係ない気がするが、何かの役に立つであろう」ということだと、限りある時間やお金を考えると効率的とは言えません(そもそも効率的に学ぶということ自体は困難だと思いますが)。

ちなみに、「何を勉強したら良いですか?」に明確な答えがあるなら、私も知りたいというのが実際のところです。つまり聴く人が違うということになります。申し訳ないです。

トレンデレンブルグ歩行を例に

例えば、トレンデレンブルグ歩行を呈している患者さんを担当した時に、「中殿筋の筋力低下が原因」と考えて、中殿筋の筋力増強運動を熱心に指導したとします。それで、DanielsらのMMTがグレード3からグレード4になりましたが歩容は変わりません。

「やはりグレード5にしないとダメだな」と考えて、また熱心に指導しますが、結局グレード5になっても歩容は変わりません。そうすると、「中殿筋の筋力低下が原因ではない」と考えるかも知れません。

強引な例ですが、「中殿筋の筋力低下がトレンデレンブルグ歩行の原因」だと仮定したとして、この例から考えられることはいくつかあると思います。

「中殿筋の筋力をDanielsらのMMTのみで判断することは適切かどうか」「MMTと歩行時の中殿筋の働きとの差異をどのように考えているか」「どんな筋力増強運動を行ったのか」「歩行練習自体はどのように行ったのか」「歩行速度の変化によって歩容はどのように変わるのか」…

…など、色々挙げることが出来ます。また、最大筋力が向上しても、必要なタイミングで必要な分の出力がなければ、歩容は変わらないかも知れません。

この例では、「中殿筋の筋力低下がトレンデレンブルグ歩行の原因ではない」と判断したわけですが、そうかも知れませんし、筋力低下「だけ」が原因ではなかったのかも知れません。

様々な角度から考えてみる

こういったことを考えていくと、歩行のバイオメカニクス、股関節や中殿筋だけでない全体の協調的な運動、運動制御や運動学習、身体図式や身体イメージなど、様々な角度から捉える必要があると思います。

足部の各関節や筋に特に問題がないようなケースであっても、実際の荷重時のアライメントと、患者さんが認知しているアライメントに差異が生じていれば、いくら股関節周囲にアプローチしても変わらないかも知れません。

結局のところ、「○○だけ」に原因があって、「○○だけ」にアプローチすれば解決することばかりではないと思いますから、様々な角度から捉え、それぞれの関係性を踏まえて介入を考えていくことで、狙った変化を導ける可能性はいくらか高くなると思います。もちろん技術的な面も不可欠です。

このように、臨床で実際に観ている「トレンデレンブルグ歩行」について迫っていくことで、様々な文献を読んだり、他の人から話を聴くなど、結果的に色々な勉強が出来ます。その勉強がトレンデレンブルグ歩行以外にも活きてくると考えています。

本来は、他の人から話を聴くという一方通行よりも話し合う、議論することが有益だと思います。教える側と教えられる側ではなく、それぞれ意見を出し合うことで、自身の思考の整理にもなります。ですから職場でも先輩後輩という上下関係ではなく、意見を言い合える関係であることが大事だと思います。これは学生とバイザーでも同じです。上下関係ではなく立場の違いです。

最後に

「これが効率的で正しい勉強方法」というつもりもないですし、そう思っているわけではありませんが、臨床の中で観られる具体的な疑問や課題に迫ることが、視野を広げることにもなると考えています。

そのような作業がなく、もっとやることがあるにも関わらず、煽り文句に感化されてセミナーに参加するよりも、そのような作業の中で利用出来るものを利用すれば良いと考えています。

セミナーの構成が如何にも円滑に臨床が進むようなものになっていると、それが出来るような錯覚が生じることもあるかも知れませんが、試行錯誤と様々な視点を有していることで、取り入れられる部分と空想の部分の取捨選択が出来かも知れません。

このようなことを書いておきながら、自分自身、「この要素は○○さんに取り入れられそうだ」と感じて、実際は上手くいかないこともあるわけですけど。上手くいかないことを確認出来たというポジティブな経験ということで…。

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