(リ)コンディショニングメモ

主にトレーニング、理学療法、リハビリテーションに関することについて。理学療法士が管理しています。

トレーニング 考え方

もし新卒理学療法士がフィットネスクラブで働いたら

2018/09/18

理学療法士の名称使用に関する通知

厚生労働省からの通知

平成25年11月27日に、厚生労働省医政局から通知が都道府県に出されました。

理学療法士が、介護予防事業等において、身体に障害のない者に対して、転倒防止の指導等の診療の補助に該当しない範囲の業務を行うことがあるが、このように理学療法以外の業務を行うときであっても、「理学療法士」という名称を使用することは何ら問題ないこと。

また、このような診療の補助に該当しない範囲の業務を行うときは、医師の指示は不用であること。

「わざわざ何でこんな通知が?」という疑問を持つ理学療法士はあまりいないと思いますが、昭和40年に制定された「理学療法士及び作業療法士法」において、理学療法士の対象は「身体に障害のある者」とされています。

ですから、予防事業、予防理学療法を実施する際に、「理学療法士と名乗ることは大丈夫なのか?」「予防事業においても医師の指示は必要なのか?」という部分が明確でありませんでした。

理学療法士の開業権や自由診療の話ではない

そういった経緯の中で、この厚生労働省医政局からの通知があったわけです。この通知は開業権だとか、自由診療の話ではなくあくまで予防理学療法に関することで、その旨は重々確認するよう、理学療法士協会の半田会長からのメッセージがありました。

理学療法士の職域拡大について

他職種がすでに活動しているかも知れない

理学療法士に限ったことではありませんが、職域を広げるということは、既存の領域である場合は、既にその領域で活動している他職種がいるということです。

例えば、介護予防とか予防医学といった領域は、様々な職種が関わっています。その中で理学療法士は何が出来るのか、専門性を発揮出来ることは何かということは、職能団体としては重要なことになります。

既にありますが、フィットネスクラブで理学療法士が活動する、パーソナルトレーナーとして理学療法士が活動するとしたら、といったこともこれから増えてくるかも知れません。

数が増えているということも関係していると思いますが、最初からそういった領域で活動することに興味を持っている人もいます。そういう意味では、かなり多様化していると言えると思います。

もし新卒理学療法士がフィットネスクラブの社員になったら

理学療法士の専門性は理解されていないかも知れない

新卒の理学療法士がフィットネスクラブの社員として勤務すると想定してみます。あくまで個人的な想定であることは、予めご了承下さい。

クラブ側が、理学療法士の専門性を考慮して、何らかの役割を想定して採用するのと、「医療系のちょっと身体に詳しい人」をとりあえず採用するのでは、話は大きく変わってくるかも知れません。

フィットネスクラブの業務は多岐に渡る

もちろん全てのフィットネスクラブがそうというわけではないですが、フィットネスクラブの社員は、トレーニングジムでの指導だけでなく、スタジオレッスン、プールレッスン、プール監視、フロント業務、その他のバックヤード業務といった、様々な業務を担当します。

そういった業務を行うのに必要な研修に参加したり、時に試験をパスする必要があったりと、どのような仕事でもそうかも知れませんが、最初から自分の専門性を活かすという機会は少ないこともあると思います。

レッスンだと通常の理学療法とは違って、同時に複数を相手に指導するわけですから、指導技術もそうですが、緊張しやすい人は最初は大変かも知れません。

勤務して最初から希望する仕事が出来るかと言えば、なかなかそういうわけにもいかず、「まずはこの仕事を覚えて下さい」ということがあるかも知れません。ちなみに会社の方針として、「こうあるべき」という話をするつもりは全くありません。

最初から専門的な仕事は出来ないかも知れない

ある程度、役割を限定させても相応の価値があると認められ、それだけの人的な余裕がある、そういった環境であれば、自身の専門性を発揮しやすいかも知れません。しかし、そうでなければ、社員は色々な業務が出来る方が、クラブの経営という観点からすると、重要だと判断されることが多いと思います。

色々な経験がしたい、色々な仕事がしたい、という人であれば、案外楽しめるかも知れませんし、「最初から専門職としてやっていきたい」という人であれば、「こんなことがしたくて入社したんじゃない」と思うかも知れません。

新卒理学療法士がパーソナルトレーナーになる?

特に何も出来ない

最初に書いたように、「新卒の」理学療法士を想定しています。医療や介護ではない領域で活動したい、フィットネスクラブの社員だと、他の業務が多い、「それならパーソナルトレーナーだ」と考えたとしましょう。

いきなり元も子もない話をしますが、新卒の理学療法士がすぐにパーソナルトレーナーとして活動するとして、何が提供出来るのかを考えてみると、フィットネスクラブのアルバイト経験などがないとすれば、「特に何も出来ない」と思います。

理学療法士の肩書きは強みにならない

そして、そんなに簡単にはクライアントさんは来ないと思います。「国家資格」「理学療法士」という肩書きは、理学療法士の数が増えて強みにならないという以前に、「理学療法士って何?」くらいの反応を想定してとも、それほど誤差はないように思います。

会員さんからしてみれば、スタジオレッスン、プールレッスンで人気のあるインストラクターやスタッフ、スタイルの良いジムスタッフの方が、距離も近いし信用出来ると考えていてもおかしくありません。

ペーパードライバーに数千円払う?

新卒だと臨床経験もないわけですから、もし病気や怪我の話になった時に、学校での勉強と臨床実習くらいしかネタがないかも知れません。そのような、ただのペーパードライバーに、1時間数千円払う会員さんはそんなに居ないと思います。

あくまで仮の話で進めていますが、指導経験も収入もあまり見込めないとすれば、勉強するにもお金がありません。集客する為にビジネス本や自己啓発本を読んでも、そんなに成果もないでしょうし、臨床経験、指導経験がない自分を如何にして売るかという発想は個人的には違和感があります。

最初からやりたい領域に飛び込むべき?

「最初はまず急性期の病院を経験してから~」「最初から活動したい領域で働くべき」といった話は時々見聞きします。様々な意見があります。

例えば、訪問リハビリテーションの仕事をするなら、急性期で様々なリスク管理が出来るようになってからだ、と言った具合です。これについては、本当に様々な意見がありますが、ここでは触れません。

「フィットネスクラブで働きたい」「パーソナルトレーナーとして活動したい」場合、最初から働く、活動するのか、他にどこかで経験を積んでから働くのかということを考えてみます。

会員さんの目的は多種多様

フィットネスクラブの会員さんの年齢層は幅広く、目的も様々あります。

・ボディメイク

・健康増進(予防を含む)

・個人の取り組みとしての運動療法(医師から勧められた)

・レッスンなどのスキルの向上

・競技パフォーマンスの向上(ボディビル、リフティングを含む)

・ストレス解消

・社会的交流

この他にも色々とあると思います。中には摂食障害などに苦しむ人もいます。

この中で、新卒理学療法士がどれだけ対応する能力があるかと言えば、なかなか難しいことが多いと思います。

では、最初は病院で臨床経験を積むことによって、対応出来るようになるかと言えば、どのような場所で働くか、どんな勉強をするかによっても、大きく変わると思います。

最初からフィットネスクラブで働く

明確な目的がないまま、「最初は臨床経験を積む方が良い」と考えるよりも、フィットネスクラブで働きながら、経験を積む、必要な知識や技術を高めていく方が、近道という考え方もあります。

身体に関するベースとなる知識はある程度は養成校で学んでいるわけですから、何が必要かを実感するのであれば、その現場で働くことが手っ取り早いと言えるかも知れません。ただ既に書いたように、最初からしたい仕事が出来るかと言えば、そうではないかも知れません。

理学療法士の臨床経験の有無について

ちなみに、病気や怪我で入院した経験があり、今もなお身体に障害がある人がクラブを利用することもあるでしょうから、臨床経験の有無はこういった会員さんをサポートするのであれば大きく違ってくると思います。

フィットネスクラブで働くのに理学療法士の免許は必須ではありませんが、理学療法士の免許があるからこそ理学療法士として働ける医療や介護の分野があります。そこでの経験は差別化を図る上でも強みになる可能性があります。

マイナスの要素に捕らわれない

養成校によって違いはあると思いますが、基本的にはいわゆる健康増進に関することについては、多く学ばないと思いますし、実習も医療や介護領域が殆どです(必修時間より多くの実習時間を設けている学校もありますから、幅広い領域で実習を経験することもあると思います)。

そうすると、無意識的であれ、マイナスの要素に目を向けやすく、プラスの要素に目を向けたり、プラスをさらにプラスへといった視点や、その知識や技術は不足しているかも知れません。

そうすると、極端な話ですが、「身体が歪んでいますよ、このままでは大変なことになりますよ。」と、クラブで楽しんでいる人に不安を与えるような介入をしてしまうかも知れません。

「もっと」をサポートする思考と能力

「もっと上を目指したい」というモチベーションを持っている人に対して、足を引っ張るようなことではなく、「もっと上を目指す」という目標に対して、出来るだけ長く安全に、そして効率的に効果的な取り組みをサポート出来るような介入が求められると思います。

「さあ身体を鍛えて筋肉つけるで!」という人に対して、「まず姿勢と筋のバランスに問題があります。今の状態でトレーニングしても、身体を悪くするだけです。」と立ち止まらせるのと、仮に姿勢など修正の余地があるとしても、トレーニングの種目やフォームの指導などによって、平行して取り組めるのであれば、明らかに後者の方がモチベーションを維持しながら、効果的なトレーニングが出来ると思います。

ただ、細い身体こそ美しい、筋量が多いほど良いといった、偏った価値観を助長することについても、注意が必要だと思います。

最後に

今回の内容は、あくまで個人的に想定した話なので、個人因子や環境因子はそれぞれ大きく違ってくると思います。

フィットネスクラブで勤務すると様々な業務がありますし、対象となる会員さんも様々な方が居られます。ですから仮に新卒の理学療法士が勤務することを想定した場合、そもそも病院であってもそうですがそれ以上に、最初から専門性を活かすことは難しいと思います。

「理学療法士に拘る必要はない」という視点はもちろんありますが、最初に触れた通知のように、職能団体として考えると、安易な行動は他に迷惑がかかる可能性があります。

「理学療法士に拘る必要はない」というのは、視野を広げて考える必要性についての話だと個人的には解釈しているので、「他に迷惑がかかろうとも、関係ないから好きにしたい」というのであれば、理学療法士を名乗らなくても良いと思います。

ただし、個々の志向性が職能団体の強みに繫ることもあると思いますから、倫理的な問題や明らかなトンデモの推奨でなければ、発展性という観点で考えるとなかなか難しい問題でもあると思います。

話は逸れましたが、いわゆるフィットネスの領域でも、理学療法士が活躍出来ることはたくさんあると思います。それを知る為には現場を知る必要がありますし、トレーニング指導の専門職やインストラクターの専門性も知る必要性があります。病院と同じように、連携、協力することが重要だと考えています。

そして、簡単なことではないですが、「どのようになりたいか」「どんなことがしたいか」を明確にしていくことが、大事だと思います。

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