(リ)コンディショニングメモ

主にトレーニング、理学療法、リハビリテーションに関することについて。理学療法士が書いています。

運動学習 指導関連 考え方

#89 「説得する指導」と「納得させる指導」の違いについて

2018/01/10

目標と現状の誤差を減らす

運動が上達するということは、望ましい運動と、そうでない運動の誤差を減らしていくということでもあります。そうすると、「望ましい運動」と「そうでない運動」の区別がつく必要があるということでもあります。

もしその望ましい運動が、指導者による「それで良い!」という外在的フィードバックのみに依存しているとすれば、指導者が常に付きっ切りでフィードバックを与える必要があります。

対象者が運動を実施している際、「それで良い!」と「それはダメだ!」という2通りの外在的フィードバックを常に与えられるとして、「それで良い!」というフィードバックを与えられた運動と、「それはダメだ!」というフィードバックを与えられた運動の誤差がわからなければ、何が望ましい運動(目標とする運動)かわかりません。

つまり、「それで良い!」「それはダメだ!」というような審判のような指導は、こういった問題が起こる可能性があります。

何が良くて何がダメなのか?

「何が」良いのか、「何が」ダメなのか、それが対象者にとって理解出来る方法で示されないと、いつまでも上達しないどころか、混乱を招いてパフォーマンスは低下するかも知れません。

また、「何が良いのか」「何がダメなのか」ということを、実際には「良い(適切)」「ダメ(不適切)」にも幅があると思いますが、指導者が本当に理解しているかどうかが重要になります。

そしてそれを対象者にとって理解出来る説明かつ実践可能な方法を提示・指導出来るかどうか、指導者としての能力が問われる部分でもあると思います。

もちろん、1から10まで、付きっ切りで指導するべきと言う話ではありません。対象者自身が試行錯誤するプロセスは学習において必要と言えるかも知れませんが、ある程度目標や方向性が見えている試行錯誤と、そうでない暗中模索は違うということは、指導者自身、認識しておく必要があると考えています。

つまり指導者が存在するという状況であるならば、その指導者の役割があるはずで、それが例えば、「対象者が出来ないことが出来るようになる」「対象者の運動が上達する」ことをサポートすることなら、その役割を果たすことが求められると思います。

対象者の暗中模索を、自身の指導力不足を覆い隠すために肯定するのは、役割を果たしていないことを誤魔化していると言えます。

説得より納得させる指導を

「何が良くて何がダメなのかわからないけど、自分の運動パフォーマンスは指導者の判定に委ねる」、つまり、望ましい運動イメージが想起出来ず、自身の運動感覚とは関係ない指標(指導者の判定)を手掛かりに運動を学習するのは、効率的・効果的な上達は難しいかも知れません。

運動パフォーマンスの良し悪しは、指導者が決めるということになると、指導者が居ない状況だとそれこそ暗中模索で練習することになります。実際は自身の運動感覚や実際のパフォーマンス(例えばボールを投げる際の運動感覚とボールの速さやコントロールといったパフォーマンス)というフィードバックがありますから、単純に切り離して考えることは出来ませんが。

「それで良い!」「それはダメだ!」は、何がどうなることが良いのか、もしくはダメなのか、対象者自身が理解し納得することが重要になります。

仮に指導者が、「バッティングで身体が開くのが早い」ということがダメだと指摘するとします。指摘された対象者はもしかしたら下記のように感じるかも知れません。

「身体が開くタイミングはどれくらいが適切なのかわからない」

「そもそも身体が開くとはどういうことかがわからない」

「何故身体が早く開くとダメなのかわからない」

「打てているのに、修正する必要があるのか…」

「そうかな、自分では出来ていると思うんやけど…」

例えばこのように対象者が考えているとすれば、指導者の指摘は対象者にとって響かないと思います。このような考えが説明などによって、「身体が開くタイミングが早いから修正しよう」と納得すれば、モチベーション高く取り組むことが出来るかも知れません。

そうではなく、「身体の開くタイミングが早いのはダメだ。そして君は開くタイミングが早いから修正しなさい。」と説得されるとすれば、納得のいく説明を受けたケースと比べて、モチベーションは高まらないかも知れません。

モチベーション(動機づけ)は、運動学習において重要な要素になりますから(参考記事:#78 「報酬」と「運動学習」について)、説得と納得の違いが動機づけに影響を与えるかも知れないと考えると、指導において工夫するなど改善の余地に気づくこともあると思います。

ちなみに、「身体が早く開くこと」が良い悪いということではなく、あくまで例として取り上げました。そのことについてのイチロー選手の考えは参考になります(参考記事:#74 イチロー選手の視点を参考に、技術について考えてみました)。

まとめ

指導者の役割は、「安全」「効率的」「効果的」に運動が上達することをサポートすることと考えると、対象者に合わせてどのような介入が適切かを考える必要があります。

「上手くいけば指導者のおかげ、上手くいかなければ対象者の問題」と考えるのではなく、常に可能性を探索するような姿勢が、指導者という専門性を磨くことに繋がると考えています。

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