(リ)コンディショニングメモ

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神経科学 運動制御

「ミラーニューロン」とは?

2018/08/22

ミラーニューロンの発見?

■Rizzolattiらの研究

ミラーニューロンの存在を最初に示したのは、Rizzolattiらの研究です(di Pellegrino G et al, 1992)。サルの到達把握運動時の腹側運動前野のF5野(ブロードマン6野)のニューロン活動について調べていたところ、実験者の到達把握運動時にも同じようなニューロン活動がみられることを確認しました。

di Pellegrino G et al, 1992より引用

こういったニューロン活動は、他者の行為を観察者の脳内に映し出しているように解釈出来ることから、そのような活動がみられるニューロンを後にミラーニューロンと名付けました。

視覚情報のみに反応しているわけではない?

■Umiltàらの研究

Umiltàらのサルを対象にした実験では、サルに到達把握運動を数回観察させた後、最後の把握運動を隠して観えないようにしたところ、観えていないにも関わらず、隠さず観察した場合と同様の脳の活動がみられました(Umiltà MA et al, 2001)。

■Maranesiらの研究

Maranesiらのサルを対象にした実験では、動作を予測出来る条件では、観察している動作の開始前からF5野の予測的な活動がみられました(Maranesi M et al, 2014)。

Maranesi M et al, 2014より引用

■Kohlerらの研究

Kohlerらのサルを対象にした実験では、ピーナッツの殻を壊したり、紙を裂く行為を自ら行うもしくは観察する際に活動するF5野が、それらの行為の際に聞こえる音を聞くだけでも活動することが確認されました(Kohler E et al, 2002)。

■Boniniらの研究

Boniniらのサルを対象にした実験では、エサを掴んで口に運ぶという行為と、エサを掴んで容器に入れるという行為では、観察している際のF5野やPFG(下頭頂小葉)の活動が異なることを示しました。このことから、行為の目的(目標)、つまり行為の意図までコード化している可能性が示唆されました(Bonini L et al, 2010)。

Bonini L et al, 2010より引用

■Newman-Norlundらの研究

Newman-Norlundらのヒトを対象にした実験では、意味のある行為を観察する際、意味のない行為を観察する場合と比較して、下頭頂小葉の縁上回が有意に活動することを示しました(Newman-Norlund R et al, 2010)。

■ミラーニューロンの機能

こういった実験の結果から、ミラーニューロンが行為の目的(目標)や意図のコード化、動作の予測に関与していることが示唆されています。

備考

・ヒトではF5野は44野と6野、PFGは下頭頂小葉(縁上回、角回)に相当します。

ミラーニューロン活動、運動イメージ、運動観察

■運動イメージとの共通点と相違点

ミラーニューロンの活動は、他者の動作の観察における感覚情報を反映する他に、他者の行為を予測あるいはリハーサルを反映していると解釈することが出来ます。

こういった活動は、運動イメージによっても起こります(参考記事:#72 「運動イメージ」について)。Rizzolattiらはミラーニューロンの活動と運動イメージの違いについて、運動観察によるミラーニューロンの活動は自動的であるのに対し、運動イメージは自発的(随意的)であると述べています(Rizzolatti G et al, 2014)。

■運動イメージと運動観察の相違点

運動イメージ(motor imagery)と運動観察(action observation)の違いとしては、運動イメージは記憶に基づく処理つまりトップダウンによるプロセスであることに対し、運動観察は他者の運動を観察するという知覚からの処理、ボトムアップによるプロセスであると言えます。

実際はこれらを完全に分けることは困難ですが、Rizzolattiらは自発的(随意的)なプロセスなのか、自動的な運動のミラーリングなのかという視点で、明確に区別しています。

まとめ

ミラーニューロンは運動学的なパラメータよりも、行為の目的(目標)や意図をコード化していることが様々な研究から示されています。その意味としては、例えば観察者にとって運動経験のない運動を観察する際、その運動を理解する手助けになるということが考えられます。

そのように考えると例えば運動を学習する過程において、運動学的なパラメータのみに注意を向けるのではなく、運動や行為の意図を理解することも重要であるという解釈も出来ると思います。

また、ミラーニューロンは共感や身体認知などにも関与しているとされており、様々な研究が進められています。

【参考文献】

・Bonini L et al:Ventral premotor and inferior parietal cortices make distinct contribution to action organization and intention understanding. Cereb Cortex. 20(6):1372-85, 2010.

・di Pellegrino G, Fadiga L, Fogassi L, Gallese V, Rizzolatti G:Understanding motor events: a neurophysiological study. Exp Brain Res. 91(1):176-80, 1992.

・Kohler E et al:Hearing sounds, understanding actions: action representation in mirror neurons. Science. 297(5582):846-848, 2002.

・Maranesi M et al:Mirror neuron activation prior to action observation in a predictable context. J Neurosci. 34(45):14827-14832, 2014.

・Newman-Norlund R et al:The role of inferior frontal and parietal areas in differentiating meaningful and meaningless object-directed actions. Brain Res. 1315:63-74, 2010. 

・Rizzolatti G et al:Cortical mechanisms underlying the organization of goal-directed actions and mirror neuron-based action understanding. Physiol Rev. 94(2):655-706, 2014.

・Rizzolatti G et al:The mirror-neuron system. Annu Rev Neurosci. 27:169-192, 2004.

・Umiltà MA et al:I know what you are doing. a neurophysiological study. Neuron. 31(1):155-65, 2001.

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