(リ)コンディショニングメモ

主にトレーニング、理学療法、リハビリテーションに関することについて。理学療法士が書いています。

トレーニング 考え方

#96 身体操作とトレーニングについて

2018/01/10

レジスタンストレーニングに対するイメージ

「筋トレをガシガシするよりも~」

「筋トレをガシガシするよりも~」という枕詞を使う人は実在しますが、レジスタンストレーニングに対するイメージが偏っているように感じることが多いです。

「がむしゃらに」「力任せに」「身体への負担が大きい」「筋トレのための筋肉」…など、まだあると思います。要するに、技術面の存在は無視して、「がむしゃらに、力任せにやれば、挙がるやろうけど、怪我に繋がるし、実際の動作には役に立たない」と考えている人もいるように思います。

このようにレジスタンストレーニングに対するネガティブなイメージを持っていると、「しんどくてリスクが高くて効果のない運動よりも、身体の使い方を練習した方が良い」という発想をしてもおかしくありません。

即時効果はトレーニング?

「がむしゃらに、力任せにやれば、挙がるやろうけど、怪我に繋がるし、実際の動作には役に立たない」ことを進んでやる方がおかしいですから、そのように信じているとそうなりますね。

ですから、ウォーミングアップ程度の体操やファシリテーションによる即時効果を、パフォーマンス向上に効果のあるトレーニングだといった思考になる人もいるのかも知れません。

ファシリテーションとトレーニング

ウォーミングアップ

ウォーミングアップは、メインのトレーニングやスポーツを行う上で、より身体が動かしやすい状態に準備する目的があります。実際の運動を伴わない運動イメージも、そのような目的で導入するのであれば、広義のウォーミングアップに含まれると思います。

活動後増強(PAP:Postactivation potentiation)

活動後増強(PAP:Postactivation potentiation)を利用して、より大きなパワーを発揮するというのも、ウォーミングアップと言えるかも知れませんが、「ウォーミングアップ(一般的・専門的)→メインのトレーニング・スポーツ→クーリングダウン」という流れが全てだと捉えると、不自然な感じもするかも知れません。

ファシリテーション(促通)という言い方もできると思います。ウォーミングアップもファシリテーションだと考えると、どっちでも良いようにも感じますが、厳密性を求めていくと大変な作業になりますね。

活動後増強(PAP:Postactivation potentiation)を利用したコンプレックストレーニングであれば、組み合わせをトレーニングとしていますから、この場合はトレーニングと呼ぶ方が適切だと言えます。

能力を引き出す or 能力を引き上げる

連続関係で考えることも出来る

いずれにせよ、ウォーミングアップやファシリテーションは、基本的には、「現状の能力を引き出す」と考えることができます。一方でトレーニングは、「現状の能力を引き上げる」と考えることができます。

しかし、「現状の能力を引き出す」ことと、「現状の能力を引き上げる」ことは、全く別の観点ではなく、「現状の能力を引き上げる」ためには、「現状の能力を引き出す」必要があります。

また、現状の能力を「最大限に」引き出そうとすれば、現状の能力を引き上げることにも繋がるかも知れません。そのように考えると、両者は別々ではなく、連続関係にあるという観方もあると思います。

ざっくり言えばトレーニング?

お決まりの体操に終始するのではなく、「身体の使い方」を適切に難易度設定し、段階的にクリアしていくというプロセスによって、「現状の能力を引き上げる」ことに繋がるかも知れません。

それが、トレーニングの原則に則って実践されるのであれば、それはトレーニングになります。形骸化した体操をいつまでもやるだけでは、その体操の過固定が起こり、「身体の使い方が大事」と言いながら、実際は自由度の低い身体の使い方を学習しているということにもなりかねないと思います。

トレーニングしなくてもパフォーマンスは向上する?

野生動物はトレーニングしない?

「野生動物はトレーニングしないから、人間もトレーニングは必要ない」という話を時折目にします。しかしながら、トレーニングをどのように捉えるのかによっては、野生動物もトレーニングしている(同種のじゃれ合いなど)と言えますし、そもそも何故野生動物を引き合いに出すのかという疑問もあります。

「野生動物はトレーニングしないから、人間もトレーニングは必要ない」と主張する人の中には、「身体の使い方が大事だ」という主張を加える人もいます。

そもそも「野生動物は~」という部分から疑問ですが、「身体の使い方」は例えばレジスタンストレーニングにしても大事なので、相反するものではありません。

身体の使い方とパフォーマンス

「身体の使い方が大事」という視点は大事だと思いますが、この視点は「現状の能力を引き出す」という発想と感じることが個人的には多いです。

もちろん「身体の使い方」が上達するということは、運動を学習するというケースもありますから、「現状の能力を引き上げている」と言えますが、例えばレジスタンストレーニングによる筋力やパワーの向上という面においては、それほど期待できないと言えます。

「効率良く動く」という表現もありますが、筋力やパワーを高めることがそれを阻害するわけではありませんから、予備能力が高く効率良く動くことが出来れば、全体的なパフォーマンスは高くなると考えることもできます。

 底上げがないと頭打ちも早い?

メディアでもパフォーマンス向上のためのトレーニングとして、体操やダイナミックストレッチのようなものを紹介しているのを時折見かけます。しかしそれは、「現状の能力を引き出す」という発想がメインであって、ウォーミングアップに含めてよいと個人的には思います。

もちろん、様々な対象者がいますから、それがメインになることもあるかも知れませんが、それがアスリートのパフォーマンス向上に繋がるのであれば、そのアスリートのコンディショニングに問題があるのかも知れませんし、一時的に向上が見られたとしても、「現状の能力の範囲」でやりくりするだけでは、頭打ちになるのも時間の問題です。

これはアスリートに限らず、患者さんでも同じように、身体機能において入院前の身体機能が、獲得可能な最大能力であるとするのであれば、予備能力は高まらず、加齢と廃用によって身体機能は低下を辿る一方といったケースもあります。

 

まとめ

結局は目的に合った手段の選択と適切な実践が重要であり、手段に捕らわれることで手段が目的化する、それは商売としてはわかりやすくはなっても、実際に対象者が恩恵を受けるかと言えば、そうではないということになります。

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