(リ)コンディショニングメモ

主にトレーニング、理学療法、リハビリテーションに関することについて。理学療法士が書いています。

考え方

#97 「スペシャリスト」と「ジェネラリスト」について

2018/03/03

多職種とその関係性

世の中には様々な専門職があって、それぞれの専門性があります。私は理学療法士ですが、現在の職場は病院ですから、様々な専門職が勤務しており、それぞれの専門職と連携を図って仕事をしています。

その中でも特に、医師、看護師、作業療法士、言語聴覚士、MSWといった専門職とコミュニケーションをとる機会が多くあります。専門領域は違えど患者さんという共通した対象者に対し、また対象者や家族などを含めて方向性を共有することが必要になります。

方向性を共有するには、それぞれの専門性を主張しても仕方ないので、自身の専門性ありきという前提ではなく、対象者がどうしたいか、どうありたいか、どうなりたいかといったことを確認し、そのサポートをどのようにするかということが重要だと思います。

もちろん対象者の本音はどうなのかといったことや、認知機能の問題で確認が困難であったり、筋萎縮性側索硬化症(ALS)などによる閉じ込め症候群によって確認が困難なこともありますから、実際は単純な話ではありません。

方向性を共有した上で、それぞれの専門職が主に担うこと、それだけではなくオーバーラップした部分については、専門職の違いに関係なく担えることはするということが実際だと思います。

まずそういったように、「ここからここまでが私の専門ですから、他は関係ありません。」という話ではないことを確認した上で話を進めていきたいと思います。

専門性を考える①

さて、専門性ということを考えると、ここから2つの観点を挙げてみたいと思います。

1つ目は、医師、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士…といった様々ある専門職の関係についてです。

これらひとつずつの専門性を挙げていくという作業は、色々な意味で大変なのでしません。あくまで様々な職種があって、それぞれの専門性があるということを前提として挙げています。

例えばですが、職場に作業療法士がいないとします。そうすると、本来は作業療法士が主に担うことを他の職種で補うということになると思います。「いや作業療法士を雇えばええやん」というのは、例え話なのでここでは除外します。

この場合、看護師、理学療法士、言語聴覚士といった他職種がカバーするということで、作業療法士がいないというデメリットをある程度軽減することが出来るかも知れません。また、そうすることで、他職種の視点が増えたり、出来ることが増えることもあると思います。

これは、他職種(ここでいうところの看護師、理学療法士、言語聴覚士)にとっては、大変な部分かも知れませんし、成長する機会でもあるかも知れません。

しかしながら、作業療法士という専門職がいないということは、その専門性に一番精通している専門職がいないということですから、いくら他職種でカバーするとは言っても、及ばない視点や介入があるはずです。

関わる専門職が多いということは、それだけそれぞれの高い質を担保出来るというメリットはあると思います。また、関わる専門職が多いことで、上手く連携が出来ていないと、機能しないというケースも考えられます。

専門性を考える②

2つ目の観点ですが、同じ専門職でも、その専門性をさらに細かく分けるということです。これは過去の記事にも書いていますが、分け方も様々あると思います(参考記事:【雑感廻り】#51 認定理学療法士を例に専門性について考えてみました。)。

運動器専門、脳卒中専門といった、対象者の疾患別に分けるということもありますし、徒手療法専門といった手段別に分けるということもあると思います。

しかし実際は、運動器のみに問題がある患者さんばかりではないですし、徒手療法専門と言っても徒手療法で改善出来ないことはどうしようもないというのは、本来はおかしな話です(参考記事:【(リ)コンディショニングメモ】#92 「徒手療法」は万能か?)。

細かく分けることで、「私の専門領域はここまで」とはっきりと線引きし、オーバーラップする部分についての理解が不足したり、本来は1人の専門職でカバー出来るケースであっても、複数の専門職が関わらないといけないといったことも起こるかも知れません。

スポーツのチームに関わる方から何度か同じような話を聞いたことがありますが、「パートナーストレッチ」と「関節モビライゼーション」は、前者はS&Cコーチがするのか、後者は理学療法士がするのかといった話があるようです。

これは、色々な視点があると思います。例えば、「ストレッチ」と「関節モビライゼーション」を完全に分けることがどうなのかということです。

他動的なSLRを行うとして、便宜的な分け方であれば、下肢を操作して股関節を屈曲させていくことで、ハムストリングスなどの筋を伸張する目的であれば「ストレッチ」と呼ぶのが一般的だと思います。

上記の操作に加え、大転子に触れて股関節の動きに誘導を加えると、「関節モビライゼーション」ということになるかも知れません。また、実際を考えてみると、そういった操作は適宜必要に応じて行っていくわけですから、「○○だけ」で目的が達成出来るとは限りません。

これらに加え、PNFテクニックの一部である、ホールドリラックスやコントラクトリラックスを行うこともあると思います。臨床ではそのように組み合わせることも多々ありますから、誰が行うべきかという分け方は難しいように思います。

PNFテクニックを使用するのであれば、「IPNFAの認定を受けたPNFセラピストがすべき」ということになれば、かなり出来る人は限られてきます。

「安全に適切に出来る人がすれば良い」と言えば、そりゃそうだということになりますが、それをどのように誰が判断するのか、チームの運営や、それぞれの専門職の役割をどのように決めているか、そもそもそれぞれの専門性とオーバーラップする部分の理解は共通認識としてあるかといったことなど、簡単に話がまとまるものではないのかも知れません。

「ジェネラリスト」or「スペシャリスト」?

今回は専門性について2つの観点で話を進めてきました。「スペシャリストかジェネラリストか」という話は時々話題になりますが、何をもってスペシャリストもしくはジェネラリストかということは、この2つの観点で考えても違ってくると思います。

1つ目の観点では、作業療法士がいないことをカバーすることによって、いわゆる専門外の部分を学び担うといった取り組みによって、「ジェネラリスト」というカテゴリーに入るかも知れません。例えば、理学療法士が作業療法の一部を担うということでジェネラリストと表現するということです(全て便宜的な表現です)。

2つ目の観点では、運動器も脳卒中も担当するだとか、運動器の認定理学療法士であり、脳卒中の認定理学療法士でもあるといったことを、「ジェネラリスト」と表現することです。また、運動療法もすれば徒手療法もするというケースもそう表現するということです。

しかし、2つ目を考えてみると、そもそも理学療法士であれば、全部行うということも当然あります。理学療法士自体をスペシャリストと考えることも出来ます。個人的にはどちらかと言えばそのように考えていますが、働く環境によっても違ってくると思います。

運動器専門を掲げている職場であれば、「運動器のスペシャリスト」と言えるかも知れません。何が良いか悪いかという話ではなく、専門性(専門能力)は環境によって大きく影響を受けるということだと思います。そもそも「スペシャリスト」と「ジェネラリスト」という分類にどれだけの意味があるのかということもありますが。

まとめ

専門性、専門領域といった話は、よく話題になるように感じます。それらは完全に独立したものではないと思いますし、「私のテリトリーはこれだ」と言って、それだけしかしないとか、オーバーラップしている部分であるにも関わらず、「私のテリトリーを侵すな」といった態度では、連携も難しいように思います。

作業療法士の例は既に書きましたが、スポーツチームであれば、S&Cコーチは居ても、ATは居ないとか、またその逆であれば、完全に補完することは出来ないとしても、ある程度カバーする部分も出てくると思います。

問題なのは、出来ないことを出来るとして振る舞うことで、これでは対象者のサポートや安全を確保するといった役割を担うことが出来ません。適任にコンタクト出来るようにする、自ら出来ることを増やすために「ちゃんと学ぶ(便宜的表現)」といったことが必要だと思います。

今回の記事のまとめとしては、それぞれの専門性があるということ、オーバーラップする部分があるということ、働く環境によって違いがあるということ、出来ないことを出来るということは問題だということです。

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