(リ)コンディショニングメモ

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立ち上がり練習は何回やればよいですか?

2018/08/21

フォームの定着

レジスタンストレーニングの場合、フォームが定着してない初期段階では、ボリュームを厳密に設定するよりもむしろ、適切なフォームを身につけることが優先順位として高くなると思います。

疲労や集中力の低下といった影響によって、フォームが乱れやすくなります。ですから、予め設定したボリュームを実施することを優先するよりも、その時に出来得る適切なフォームで行い、乱れてくれば休息をとったり次回に持ち越すことになります。

初期に集中力の低下が起こりやすいのは、新規の課題を遂行する上での認知的負荷が大きいことや、中枢性であれ末梢性であれ疲労が集中力の低下を招くといったことが考えられます。

もちろんフォームが定着している段階でも、疲労や集中力の低下は起こりますが、エラーを検出し修正する能力が高まっているでしょうし、試行錯誤の段階よりも安定したパフォーマンスを発揮しやすいと言えます。

何故、立ち上がり練習を行うのか?

理学療法において、立ち上がり練習を行うことはよくあると思います。何故立ち上がり練習を行うかということを考えてみると、恐らく立ち上がり動作に修正の余地があったり、そもそも立ち上がれない(自立度が低い)といった理由が主だと思います。

仮に筋力向上を主な目的として行うのであれば、立ち上がり「練習」という言葉は適切ではないかも知れません。まあ臨床のレベルだと、名称は何でもよいとも言えます。筋力向上を図るのであれば、スクワットを行えば良い場合もあると思いますが、支持基底面や重心の移動は立ち上がり(と着席)とスクワットでは違いますから、目的によると言えます。

立ち上がり動作に修正の余地があり、そのポイントを修正することの優先順位が高い場合は、レジスタンストレーニングの例でも書いたように、フォームが定着していない初期段階の介入との共通点が多くあると思います。

つまり、何回行うとか、何セット行うといった量よりも、その時に出来得る適切な動作を繰り返す方が優先順位は高くなります。修正する為には量も必要になりますが、エラーをそのままに量を遂行したところでエラーは修正されませんから、その時に出来得る適切な動作で練習する必要があります。

そもそも立ち上がれない(自立度が低い)場合は、動作の修正によって立ち上がれることもありますし、介助や高坐位で行うといった介入によって徐々に動作能力を上げる(上がっていく)こともあると思います。

そのように考えていくと、「立ち上がり練習を何回行えばよいか?」という話ではないと言えます。学生の時にありがちだと感じるのは、例えば10回と回数を設定し、回数を数えて、10回すれば終わりという介入です。

目標と実際の差異を認識する

立ち上がり「練習」を行うと考えるに至った理由があるわけですから、「立ち上がり練習を10回行う」ことが理由でない限り、決めた回数を実施して終わりといった介入になるのはおかしいと思います。

動作に修正の余地があるなら、そのポイントがどうなっているのか、どのようにすれば修正した動作に導けるのか、そういったことを考えて指導するのであれば、何回行うということはそれほど重要ではなくなります(回数は無視して良いという意味ではありません)。

これは立ち上がり練習に限らず、歩行練習にしろ、歩行の局面を切り取った分習法的な介入にしろ、「どうなれば良いか」「どのように導きたいのか」といったイメージを持って行わなければ、具体的な介入がイメージ出来ずに、ただ回数を数えて終わりになりかねません。つまり、対象者だけでなくセラピストが目標とする動作と実際の動作の差異を認識している必要があると思います。

たくさんした方が良い?

1日に〇回立ち上がり練習を行うことが良いといった話もありますが、「たくさんした方が効果的だ」と言っても、何に対する効果なのかを明確にしないと、少し短絡的な話にも思えます。

たくさん回数が出来るということは、それだけ長い時間行うことが出来るということです。何に対する効果なのかを考えずに、優先順位を考慮して、限られた時間をどのように過ごすのかを考えることは難しいと思います。

仮に筋力向上を図る目的なのであれば、効率的とは言えません。例えば脳損傷後の可塑性を踏まえた運動機能改善(学習)を図る目的なのであれば、回数は重要な変数かも知れません。

何れにしても、目的を明確にすることと、何がよりベターな介入なのかを考える必要はあると思います。

最後に

治療プログラムとして動作練習を行うのであれば、「どのように」行うかが重要になります。学生の場合は動作を修正するという介入の経験が殆どありませんから、ある程度のイメージ(その時に出来得る動作のイメージ)を持っていたとしても介入が難しいことも多いと思います。

「ただ数をやればよい」と考えている学生はそうそういないと思いますが、上手く導けないが故に、結果的にとりあえず何を何回行ったといったように、「立案したプログラムを表面的に行っただけ」ということになりやすいように思います。

ですから、修正するポイントを明確にすること、またそもそも何故そのようになっているのかという仮説を立てることで、具体的な介入を考えることが出来るかも知れません。もちろん必要に応じて、バイザー自身が実際にやって見せることも大事なことだと思います。

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