(リ)コンディショニングメモ

主にトレーニング、理学療法、リハビリテーションに関することについて。理学療法士が書いています。

神経科学 トレーニング 指導関連 考え方

#14 言語的な説明より、見せる方が早いこともある?

2017/10/13

体験する前から情報を与えすぎない

基本動作にしても、レジスタンストレーニングにしても、運動の見本を見せる場面があると思います。フィットネスクラブでは、オリエンテーションで、トレーニングマシンの説明をする際に、見本を見せることも多いと思います。

例えば、レッグプレスの説明では、シートの位置、足を置く位置や足部のアライメント、膝の位置、上半身の姿勢、動作時のスピードや呼吸、足底のどの部位に主に荷重するか、陥りやすい望ましくない動作、主に動員したい筋群を意識するのかどうか、そういったことについて、全部説明することはないにしても、実際に体験する前から多くの情報を与えるケースもあります。

動作の修正は、実際に動作を行わないと出来ないわけですから、動く前から情報を与えすぎることで、どこに注意を向けたら良いのか、注意の配分をどうすれば良いのか分からず、ぎこちない動きになるといったことは少なくないと思います。

たくさんの情報を与えることが丁寧な説明であると考える人もいるかも知れませんが、結果的にぎこちない動きを誘発するのであれば、その丁寧さは結果的にはマイナスに働いているわけです。

実際に動いてもらって、修正が必要なことがあれば、その時にアドバイスすれば良いのであって、動く前から情報を与えすぎることは、ぎこちない動きを誘発するだけでなく、余計な時間がかかるので、指導の効率・効果を考えてもあまり適切とは言えないと思います。

見本を見せること

丁寧な指導を心がけるとすれば、必要最小限のことを分かりやすく説明することと、見本を丁寧に見せることだと考えています。色々たくさんの言語を与えながらも、見せる見本は雑だとすれば、対象者にとって何を手掛かりに動けば良いのか分からないと思います。

運動学習の初期においては、運動イメージよりも運動観察の方が優れていることを示唆する研究もあります(Gatti R et al, 2013; Gonzalez-Rosa JJ et al, 2015)。慣れていない運動、やったことのない運動をイメージすることは難しいですから、言語的な情報を与えすぎずにまず見せる方が有効かも知れません。

実際にその運動を行っていなくても、運動を観察することによって、脳の中では自分が運動をしている時と似た活動が起こることが知られています。実際は動かないわけですから等価的とは言えないですが、運動観察によって姿勢バランスなどのパフォーマンスが向上するといった研究(Taube W et al, 2015)など、運動観察が実際のパフォーマンスに影響を与えることが確認されています。

1から10まで説明することが丁寧な指導とは言えない

そのように考えると、「丁寧な動きで見本を見せる」ことが重要だと考えることが出来ると思います。どのように動くか、その動きのポイントを言語化せずとも、見本で示すことが出来るかも知れません。もちろん言語化することが必要ないという意味ではありません。

ですから、指導マニュアルのように、説明ポイントをいくつか頭の中に入れておくこと自体は問題ないと思いますが、それを全部説明する必要はないと思います。「丁寧な動きで見本を見せて、実際にやってもらって、修正が必要な部分に対してアプローチする」方がスムーズにいくかも知れません。

もちろんケースによっては、見本を見せずに行ってもらうこともあるでしょうし、これがベストだという意味ではありませんが、自身の指導が形骸化していないかどうか、見本が雑になっていないかどうか、常に振り返る必要があると思います。

まとめ

「指導者たるもの実践者であれ」という言葉を時折見聞きしますが、これから行う運動の見本を見せることが出来るという意味では、対象者の上達をサポートするためにも重要なポイントと言えると思います。

他には、見本となる動画を見せるといった方法もあると思います。ただし、現状のレベルより遥か上の動画を見せることはイメージづくりには有効かも知れませんが、これから実際に練習を行うといった際には、あまり乖離し過ぎないような配慮が必要なケースもあるかも知れません。

【参考文献】

・Gatti R et al:Action observation versus motor imagery in learning a complex motor task:a short review of literature and a kinematics study.Neurosci Lett 540:37-42,2013.

・Gonzalez-Rosa JJ et al:Action observation and motor imagery in performance of complex movements: Evidence from EEG and kinematics analysis.Behav Brain Res 15:281:290-300,2015.

・Taube W et al:Brain activity during observation and motor imagery of different balance tasks:an fMRI study.Cortex 64:102-114,2015.

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