(リ)コンディショニングメモ

主にトレーニング、理学療法、リハビリテーションに関することについて。理学療法士が管理しています。

指導関連 考え方

理学療法士がピラティスなどボディワークを学ぶ意義について

2018/08/21

さまざまなボディワーク

ボディワークというカテゴリー

「ボディワーク」と言っても色々ありますし、「ボディワークとは?」と、明確に定義されているのかというと、各メソッドや指導者によっても違いがあるように思います。

しかしながら、そういったカテゴリーで語られるものの例としては、アレクサンダーテクニーク、フェルデンクライス、ピラティス、フランクリンメソッド…これら以外も色々あります。

日本で言えば真向法体操、野口体操、操体法、ゆる体操なども、そのカテゴリーに入るかも知れません。「ボディワークとは?」を厳密に定義するつもりはありません。

例えばピラティス

ピラティスの歴史については、ここでは細かくは触れませんが、ピラティス氏が「コントロロジー」と名付けた、いわゆるボディワークのひとつと言えます(ここではそうします)。

「コントロロジー(contrology)」という言葉からすれば、形骸化したエクササイズを闇雲に行うというものではない、と推察しやすいかも知れません。

ピラティスはフィットネスクラブのレッスンでも行われており、グループレッスンや個人レッスンもあります。ツールを使用するものもありますし、さまざまなワークがあります。

指導者の視点で考えてみる

ワークの指導手順の例

例えば、初めて行うワークを指導する際には、見本を見せる必要があります。言葉掛けだけでも可能なこともありますが、見せる方が早い、イメージがしやすいというメリットがあります。

言葉を用いずに、見本を見せることもあると思います。言語を用いることで注意が誘導されやすくなりますから、クライアントが初めて観るワークを、クライアントのペースで観察する機会を設けるということもあります。

指導方法はケースバイケースですし色々あるはずですが、「まずは見てやってもらう、そこから必要な言葉を選ぶ」ということもよくあると思います。

最初からあまり言語による情報を与えすぎると、かえって動きづらくなるというケースはよくあると感じます。ですから、相手に必要なことだけを伝えることが出来れば、スムーズかも知れません。

グループレッスン

複数を相手に指導する場合は、人数によっては、「まずは見てやってもらう、そこから必要な言葉を選ぶ」ことが難しいこともあると思います。

見本を見せることに加えて、そのワークのポイントとなる部分は予め伝えておくこともあるでしょう。例えば、陥りやすいエラーを提示するのではなく、結果的にエラーが起こりにくいポイントを伝えるといったことです。

そして実際にワークを実施する中で、指導者は参加者それぞれのワークを確認し、個別に声をかけることもあれば、多くの参加者に共通したエラーがあれば、参加者全員に伝えるといった方法も考えられます。

ただし、エラーが起こっていない参加者が、必要のない修正をしようとする可能性があるので、指導者は参加者が複数であっても、個々のワークを把握しておく必要があります。

そのように考えると、グループレッスン(集団指導)を行う指導者は、複数の参加者のワークを把握し、限られた時間で適切な指導が求められます。

徒手療法とボディワーク

そもそも違うものを比較するのは強引ですが、今回の記事のポイントでもあります。例えば、モビライゼーション(軟部組織、関節)などの徒手療法は、基本的にはそれを行う側(以下セラピスト)とされる側(以下患者さん)、つまり患者さんは受け身になりやすいという側面があります。

セラピストは相手に触れて介入することになります。関節の副運動にしても、方向や強さや持続時間はセラピストが主導になると思います(患者さんの訴えを参考にすることはあるとしても)。

もちろん、セラピストが患者さんに何らかの課題を与えること、患者さんが能動的に注意を向けるといったことはあると思いますが、ボディワークと比較すれば、その程度は少ないと言えます。

動作介助の方法は多様

見かけを整える介助?

例えば、理学療法士であれば、歩行練習の際に患者さんの身体の一部に触れて、介助、誘導することはそれほど特別ではないと思います。ただその方法は多様であるようにも感じます。

「もっとこういう動きに近づけたい」というイメージがあるとして、その動きになるように強引に誘導するケースもあるかも知れません。

患者さんからすれば意図せずともそうなる動き、そうならざるを得ない状態に対して、そうならないように押されるわけですから、抵抗しようとするかも知れません。そうなると、ますます導きたい動きから遠のいてしまいます。

見かけを整えようとするだけでは、反対に上手くいかないことも多いはずです(介助自体が「見かけを強引に整えようとするもの」という意味ではありません)。

言葉掛けだけで上手くいかないことは多々あるとは思いますが、言葉掛けによる指導の能力が低いまま、直接触れて介入する方法しか知らなければ、指導の幅は狭くなると思います。

言葉の重要性

理学療法士に関して言えば、言葉掛けによる指導の重要性を、学生時代から認識し学校で学ぶ機会はそう多くはないかも知れません(もちろん学校によると思います)。

そうだとすれば、見かけとしての標準的な動作から逸脱しているケースで、求める動きをそのまま伝えるように、「もっとこうして下さい」と指示するかも知れません。それで出来れば良いですが、それで出来れば苦労しないということも多いはずです。

それで上手くいかなければ、見かけを整えるために、患者さんに触れて強引にその動きに近づけるかも知れません。もちろん、見かけではなく、運動学的に考えるだけでも介入は違ってくるとは思います。

ボディワークにおけるキュー

触れずに指導する

ボディワークに限らずですが、フィットネスクラブのスタジオレッスン、例えばピラティスの指導を考えると、何十人も参加している中で動きを指導することが多々あります。

参加者の身体に直接触れて、誘導するわけにはいきませんから、それ以外の方法で指導する能力が磨かれると言いますか、不可欠であると言えます。

バーバルキュー

よく言われるのが、「バーバルキュー」と「ビジュアルキュー」です。バーバルといっても、導きたい運動をそのまま伝えるだけではありませんし、ビジュアルといってもただ見本を見せるだけではありません。

「骨盤を前傾して下さい」で出来れば良いですが、結果的にそうなるような言葉掛けが必要かも知れません。ベタな言い回しを例に挙げると、坐位でれば、「おへそを前に突き出して下さい」、(坐骨結節の位置を認識しているなら・認識させた後に)「坐骨で座って下さい」などがあります。

もちろん、これらの言葉掛けでもエラーは起こりますが、相手と状態に合わせて言葉を選択するということです。比喩を用いることもよくあるはずです。

ビジュアルキュー

動きを大まかに観てもらいたい場合と、あるポイントを観てもらいたい場合は、当然のことながら見せ方は違ってきます。

大まかに全体を見せるなら、距離は少し離れるでしょうし、あるポイントを見せるなら、距離は少し近くなるかも知れません。矢状面の動きについて見せるのであれば、矢状面の動きがわかるようにするはずです。

対面の指導であれば、「右脚をこのように…」と言いながら、指導者は左脚を動かすということもあります。

そして、ビジュアルキューなので、指導者が見本となる動作が出来ないと話になりません。ですから当然、指導者自身が何度も繰り返して練習する必要がありますし、その過程で自分自身の身体の状態を認識するなど、自然に向き合っていくことになると思います。

例えば、理学療法士が基本動作を指導することを考えると、質はどうであれ理学療法士自身は出来るわけですし(多くの場合)、患者さん自身も一度は学習した動作ということもあって、何となく動いて見せることもあるかも知れません。

実際は組み合わせになる

バーバルキュー限定、ビジュアルキュー限定、そういった条件を強いられるケースでないのであれば、よりわかりやすく、より結果が良いように、必要であれば組み合わせれば良いと思います。

身体に触れることが可能であり、スムーズな動きの習得に貢献するのであれば、触れることも当然選択肢に入ってくると思います。触れることが良い悪いという話はナンセンスだと思います。

ボディワーク特有の話ではない

色々書いてきましたが、バーバルキューにしろビジュアルキューにしろ、ボディワーク特有の話ではありません。ボディワークに触れたことがない指導者であっても、これらの使い方に長けている人はたくさんいますし、「ボディワークを学ぶべき」といった話ではありません。

ただ、普段から対象者の身体に触れる立場にあれば、触れることに対して疑問を持ちにくいこともあると思います。よく言われる、「まず患者さんを寝かせてマッサージ」も、それがルーチン化しているのであれば、同じような話なのかも知れません。

例えばエアロビクスのインストラクターであれば、参加者の身体に触れることはあまりないでしょうから、それ以外の方法を用いて指導するので、バーバルキューやビジュアルキューの用い方が上手いですし、上手くないと出来ないとも言えます。

重度な視覚障害のある対象者であれば、視覚以外の感覚を利用して指導することになるでしょうし、立場だけでなく、対象者によっても柔軟に指導方法を変えられる能力は必要だと思います。

最後に

対象者の身体に触れることが特別でない立場であれば、当たり前のように触れることもある気がします。本当に触れる必要があるのか、それ以外の方法がよりベターである可能性はないのかを考える必要があると思います。

何かしらのボディワークに触れる機会があり、それを学ぶことでそういった考えに至るのであれば、もしかしたら自身の臨床を見直すきっかけになるかも知れませんし、それによって良い変化を実感するかも知れません。

今回の記事は、ある方が、「ボディワークを学ぶ理学療法士が結構いるのは何でなんですかね?」という質問を受けたことがあって、その理由についてあくまで個人的に考えたことを書いてみました。

あとは、内面のことについて触れているものが多いというのもあるかも知れません。

【参考記事】

-指導関連, 考え方