(リ)コンディショニングメモ

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トレーニング 指導関連 考え方

ベンチプレスは意味のないトレーニングか?

2018/08/23

ベンチプレスは意味がない?役に立たない?

日常にない動きだから意味がない?

「あのような動きや負荷のかかり方は日常ではないから、ベンチプレスは意味のないトレーニングだ」というような意見があります。ベンチプレスはあくまで例に過ぎないですが、このような視点を強調していることを見聞きすることがあります。

そのような意見を極端にすれば、「そもそもダンベルやバーベルやマシンは日常では用いないから、ダンベルやバーベルを使用したトレーニングは意味がない」ということになります。結局こういう話は、ある前提を設定した場合は間違っているとは言えませんが、このような意見を違った視点から考えてみます。

日常生活活動の個人差

日常生活における身体活動量や身体運動のバリエーションはかなり個人差があります。仮に車通勤でデスクワークが中心、1日の歩行距離も短く、特に運動もしていない生活を送り続けていると、各体力要素、予備能力の低下が進むことが予想されます。

ただでさえ、加齢に伴って各体力要素、予備能力が低下するわけですが、身体活動量が少ないことでさらに加速する可能性が高くなります。筋力、パワーも低下していくわけですが、それに歯止めをかける方法として、日常生活の身体活動を見直すこと、レジスタンストレーニングなどの体力トレーニングを取り入れるなどが考えられます。

日常生活を基準にするのは適切か?

そもそも個々の日常生活の身体活動の内容を無視して、「日常生活ではそのような運動や負荷のかかり方はない」からと、無意味とするのは少々強引だと思います。その人の身体活動量やバリエーションが、身体機能・予備能力を維持出来る内容なのかということを考える必要があります。

ベンチプレスの動きや負荷のかかり方は、日常生活であまりないとしても、動員する筋群に関しては、上肢を使用した起き上がりだったり、ものを頭側に挙上するといった場合に共通する部分が多くあります。

OKCとCKCの違いだとか、姿勢が違うといったことに目を向ければ、違う点もたくさん挙げられるでしょうけど、「ベンチプレスは万能なトレーニング」と主張しているわけじゃないのであれば、特に上半身のトレーニングとして選択肢に挙がってもおかしくはないと思います。

予備能力を向上させるという発想

全身をトレーニングする

少なくとも、いわゆる健康増進といった観点で考えれば、全身の筋力やパワーを維持・向上させておくことは、予備能力を向上させるという、意味のあることだと思います。

例えば、「歩く時は上肢の筋力は殆ど関係ない」からと言っても、怪我をして松葉杖を使用する際には、上肢(上半身)の筋力はある程度必要になります。だから全身を鍛えるべきと主張するつもりはないですが、予備能力が高いに越したことはないということです。

トレーニングは予防の観点で語られることが多いように感じますが、受傷、発症前の体力レベルは、その後に大きく影響することがよくあります。

筋力、パワーといった体力要素を向上させる効率的な手段として、レジスタンストレーニングが候補として挙げられるのは自然だと思いますし、上半身の種目としてベンチプレスが候補として挙げられるとしても、おかしな話ではないと思います。

【備考】

レジスタンストレーニングは筋力やパワーといった体力要素だけで語られるものではないですが、話をシンプルにするために便宜的にその他の要素には触れていません。

使わない機能は低下していく

日常生活活動≠理想的な活動?

日常生活の身体活動を基準にすると、本来備えている身体運動の自由度と各体力要素が、その人の日常生活における身体活動の偏りによって、あまり動員していない能力は低下していくことになります。

関節を大きく動かさなくなれば、関節可動域が制限されていきますし、大きな力を発揮しなければ、筋力は低下していきます。走らなければ走れなくなるし、足がもつれて転倒するかも知れません。

そもそも体力トレーニングは日常生活以上の運動強度や難易度でなければ、予備能力の向上はほとんど期待出来ないわけですから、「日常生活ではそんな動作はしない」といった観点は少し違和感があります。

全ての体力要素を維持・向上させるべきという意味ではないですが、「(その人の)日常生活では必要ないから」という理由は、本当にそうなのかということについて、少し考えた方が良いケースもあると思います。

最後に

ベンチプレスに限りませんが、「日常生活にはそんな動作はないから必要ない」という視点はもちろんありますが、「そんな動作はないからこそ必要」という視点もあります。もっとシンプルに「ベンチプレスが好きだからする」というケースも当然あるはずです。

これはスポーツ選手における、「競技にそんな動作はないから必要ない」という視点と共通している部分もあると思います。そういった視点だと、日常生活を過ごしていれば十分、競技練習をしていれば十分という発想になりそうですが、「どうなりたいか」といった目的や目標を考えていくと、それ以外の発想も生まれてくるように思います。

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