(リ)コンディショニングメモ

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神経科学 運動制御

「ピノキオ錯覚」について

2018/08/22

ピノキオ錯覚

「ピノキオ錯覚」という言葉はよく見ますが、その有名な論文(Lackner JR 1988)です。非常に面白い実験だと思います。この実験ではピノキオ錯覚以外の実験もされていますが、それについては省略します。

目隠しをして片手で鼻をつまみます。鼻をつまんだ方の上腕二頭筋に対して振動刺激を与えると、その人はどう感じるかということですが。

 

Goodwin GM et al, 1972より引用

'Oh my gosh, my nose is a foot long! I feel like Pinocchio.'

ピノキオのように鼻が伸びたように感じた人がいたので、この錯覚は「ピノキオ錯覚」と呼ばれています。ちなみに上記のセリフは実際に論文に書いてあるセリフです。

被験者全員がそのように感じたわけではありません。この研究の被験者は健常な男女14人で行われました。そのうちの10人は腕が伸びたように感じ、またそのうちの5人は鼻が30㎝伸びたように感じました。また3人は鼻は伸びずに指が伸びたように感じ、2人は鼻も指も伸びたように感じました。残り4人の被験者はそれとは違った錯覚が起こりました。

緊張性振動反射とは

何故このような錯覚が起こるのかということですが、腱に対して振動刺激を与えると、その筋は反射的に収縮します。これを緊張性振動反射(Tonic vibration reflex,TVR)と呼びます。

振動刺激を与えている部位が固定されると、反対の運動が起こるような錯覚が生じます。屈筋に対して振動刺激を与えると、伸展するような錯覚が生じるということです。今回の実験のように、上腕二頭筋に対して振動刺激が与えられると、鼻をつまんで固定されていますから、肘関節が伸展するように錯覚します。

脳が辻褄を合わせる

「鼻をつまんだまま肘関節が伸びている」のであれば、「鼻が伸びている」ということで辻褄が合います。

被験者は感覚にも運動にも問題のない、18~30才の男女であったため、本当に鼻や腕が伸びることはないと頭では理解しているにも関わらず、そういった錯覚が生じたということになります。このように文脈に合うように錯覚が生じるということは、ピノキオ錯覚のみならず、様々な実験で明らかにされています。

【参考文献】
・Goodwin GM et al:The contribution of muscle afferents to kinesthesia shown by vibration induced illusions of movement and by the effects of paralyzing joint afferents. Brain 95:705-748, 1972.

・Goodwin GM et al:Proprioceptive illusions induced by muscle vibration: contribution by muscle spindles to perception?  Science 175:1382-1384, 1972.

・Lackner JR:Some proprioceptive influences on the perceptual representation of body shape and orientation. Brain 111:281-297, 1988.

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