(リ)コンディショニングメモ

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「筋醜形恐怖症(Muscle Dysmorphia)」について

2018/08/23

レジスタンストレーニングのやりがいや効果

アスリートに限らず熱心にレジスタンストレーニングに励む人は少なくありません。アスリートであれば試合で活躍するという明確な目標がありますが、そうでない人にとっては目的はさまざまです。

挙上重量が上がっていくことがやりがいとなり、いつしかパワーリフティングやウェイトリフティングの大会を目指すようになるという人もいます。筋量が増えていくことで、いつしかボディビルディングなどの大会を目指すようになる人もいます。

身体を動かすこと自体が気持ち良く感じたり、体調が良くなると感じるといったことで続ける人もいます。レジスタンストレーニングに限らず適度な運動は健康にとって有益であるということは、さまざまな研究でも示されています。

筋量を増やすことが目的であっても、結果的であっても、筋量が増えることにやりがいを感じるといったことは少なくないと思います。仮にレジスタンストレーニングに筋肥大の効果がないとすれば、やらない人もいると思います。

髪型や身に付けるもので気分が変わるように、体型が変わることで気分も変わることはあるでしょうし、それがポジティブに働くことも当然あると思います。

しかし、何でもそうですが、体型に対する関心が「過度」になると、ポジティブなことばかりではなく、むしろネガティブな側面も大きくなる可能性があります。

筋醜形恐怖症とは

2004年のNSCA JAPANのジャーナルにも、「筋醜形恐怖症」(原文タイトルはMuscle Dysmorphia)が取り上げられました。筋はかなり発達しているにも関わらず小さいと感じるといった思考になり、極端な行動をとるようになります。

これは「目標が高い」ので「非常に努力する」と捉えれば、向上心のある人だということになるかも知れません。もちろんそのような思考自体が、「筋醜形恐怖症」(Muscle Dysmorphia)ではありません。

問題となるのは、そのことで極端な行動に走ることです。オーバートレーニング、極端な摂食行動、薬物の乱用などがその例です。そういった行動が健康を著しく害するリスクを高めることになります。

また、トレーニングや極端な摂食行動を確保するために、仕事を辞めたり、家族や友人などの人間関係を断つといった行動をとることも少なくないようです。例えこのような行動によって筋量が増えたとしても、それで落ち着くことは殆どないそうです。

価値観は多様である

「強く美しく健康的な身体」というイメージを持たれることも少なくないのと、向上心があるという捉え方もありますから、こういったネガティブな部分が覆い隠される可能性があります。

「個人の自由だ」と言えばそうですが、社会的な問題をきたす可能性を考えると、一概には肯定出来るものでもないと言えます。また個々のレベルの話ではなく、そういった価値観が普遍的であるかのような打ち出しは問題もあると思います。

ダイエット番組などによって「細いほど良い」「体重が少ないほど美しい」といった、偏った価値観が広まることで、ネガティブな影響を受ける人も少なくないということと、同じような問題を含んでいるようにも思えます。

食事や運動指導に携わる専門職も、偏った価値観を助長しない配慮は必要です。前職でいわゆる食事や運動指導のためのカウンセリング研修をしていた時に、会員さん役が「1ヵ月で3kgも太ってしまったんです」と言った際に、指導者役が「3kgも太ってしまったんですか」と答えました。

何気ない反応ですが、「も」「しまった」という言葉は無意識ながら、ネガティブなことであるという意味が含まれていると言えますから、わざわざ指導者側が価値づけする必要はないのでは?という話をしたことを思い出しました。

またSNSで見かけたことですが、「他人がゴロゴロしている間に、私はボディメイクのためにストイックに取り組んでいる」といった内容がありました。そりゃゴロゴロもするでしょうし、ストイックに取り組んでいるのはその人の価値観による行動であって、他者を見下す必要はないわけです。

まとめ

多様性はあって然るべきであり、個々の価値観は尊重されるべきではあると考えますが、それが普遍的であり、その価値観から外れているものは「良くない」ものとすることが、問題だと個人的には考えています。もちろんこれは、体型に限った話ではありません。

個人的には、例えばボディビルディングの大会で観るような非日常的なレベルは単純に凄いと楽しめるので、筋肥大を含めたボディメイクを否定する意図は全くないことは、念のため確認しておきます。ただ今回のような問題は、指導者は頭に入れていた方が良いと思います。

【参考文献】

・Dawes J et al: Muscle Dysmorphia. J Strength Cond Res 26: 24-25,2004.

・Leone JE et al: Recognition and Treatment of Muscle Dysmorphia and Related Body Image Disorders. J Athl Train. 40:352-359,2005.

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