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神経科学 運動学習

スクワット指導時の言葉掛け~内的注意と外的注意~

2018/08/22

スクワットに対する言葉掛け

言葉が違えば動作は違うかも知れない

例えば、「つま先より膝が前に出ないようにしゃがんでいきましょう」という言葉掛けと、「和式トイレのようにしゃがんでいきましょう」という言葉掛けでは、スクワットの下降局面の動作は違ってくるかも知れません。

前者は自身の身体に注意を向けながら行う課題であり、後者は経験による運動イメージを利用した課題と言えます。そもそも、つま先より膝が前に出てはダメなのかということはありますが、導きたい動作は同じでも教示によって違う動作になることがあります。

つま先より膝が前に出ないように気をつけることで、もしかしたらスムーズにしゃがめないかも知れません。また、和式トイレでしゃがむ経験がある人とない人、その動作が苦でない人と、苦手な人では動作が違ってくる可能性があります。

前者は「つま先が前に出ないようにする」+「しゃがむ」という複数の課題となります。後者は「しゃがむ」という単一の課題と言えます。しかしながら、和式トイレの状況を鮮明にイメージすると、便器などの環境に適応した動作や、下衣の操作といったように、必ずしも課題が単一と言えないケースもあるかも知れません。

内的注意と外的注意

また、前者は自身の身体運動に注意を向ける内的注意(internal focus)を伴った運動と言えます。後者は例えば上記のように状況をイメージしているのであれば外的注意(external focus)を伴った運動と言えるかも知れません。

外的注意は内的注意と比較して、パフォーマンスの向上や運動学習にとって有効という研究は多くありますが、必ずしもそうではないという研究や、内的注意か外的注意かというようにどちらか1つと単純に分けられるものなのか、道具などを使用しない動作において外的注意の範囲をどのように考えるのかといったことなど、整理する必要があるのかも知れません(私が知らないだけという可能性はあります)。

同じ荷重でも教示で変わる可能性

同じ結果を導く言葉でも学習効果が違うかも知れない

スクワットとは別の例を挙げると、渡邉らによる実験では、通常立位から、荷重の割合が左下肢に1/3、右下肢に2/3となる課題において、「右下肢の荷重が2/3になるよう教示する群」と「左下肢の荷重が1/3になるよう教示する群」では、前者の方が学習効果が高かったという結果となりました。つまり、同じ結果を導くはずの2つの教示は、実際には違いがあると言えます。

これまでの話は、どのような言葉掛けが正しいか、間違っているかという話ではなく、同じ結果を導くように思える教示であっても、実際は違ってくることもあるということです。

同じ言葉掛けであっても、対象者が違えば導かれる運動は違うこともあります。同じ言葉でも対象者によって描くイメージは違うかも知れません。

身体の部位とイメージ

「肩」と聞いて、三角筋をイメージする人もいれば、僧帽筋やそれらを含めた広範囲なイメージを持つ人もいるかも知れません。また解剖学の知識がある人とない人でも違うかも知れません。

「膝を動かして下さい」と聞いて、膝関節の運動をする人もいれば、例えば股関節を動かして膝の位置を変える人もいるかも知れません。

まとめ

このように考えていくと、言葉掛けの内容自体は間違っていなくても、対象者や状況によっては不適切な言葉にもなり得ると言えます。言葉掛けが不適切であるが故に上手く出来ないケースを、「筋力が不足している」といって筋力向上を図っても、そもそも原因が違うので、結局出来ないかも知れません。

また、対象者が持つその言葉の意味やイメージと、指導者のそれとが解離していても、なかなかうまくいかないと思います。ですから、対象者と対話し共通認識を見出す、確認すること、対象者と目的や状況に合わせた言葉の選択が重要になると考えています。

もちろん、臨床ではコミュニケーションに関して困難なケースもありますが、出来るだけ一方通行にならないような配慮と丁寧さを持ち合わせた臨床が出来ればと、自身に確認するように書いています。

【参考文献】

・渡邉観世子, 他:部分荷重課題に対する教示の効果. 理学療法科学 22:77-81, 2007.

・Perkins-Ceccato N et al:Effects of focus of attention depend on golfers' skill. J Sports Sci. 21:593-600, 2003.

・Wulf G et al:The learning advantages of an external focus of attention in golf. Res Q Exerc Sport 70:120-6, 1999.

・Wulf G et al:Instructions for motor learning: differential effects of internal versus external focus of attention. J Mot Behav. 30:169-79, 1998. 

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