(リ)コンディショニングメモ

主にトレーニング、理学療法、リハビリテーションに関することについて。理学療法士が書いています。

考え方

#65 努力すればオリンピックで金メダルが獲れる?

2018/03/25

努力は報われる?

「諦めずに努力すれば必ず報われる」といったセリフに普遍性があるかと言えば疑問はありますが、普遍性があるようにケースを考えると思いつかなくもないですね。

「諦めずに努力すれば必ず報われる」ということを考えると、当初の目標を達成できなかったとしても、そのプロセスで学ぶことがたくさんあった、それを「報われた」と言うのであれば、まあそうなのかなと言えなくもありません。

このような言葉遊びは、何かを考える時に視野を広げたり視点を増やすことに役立つかも知れませんが、こういうことを言い出すと何とでも言えるので、こういった、きりのない話を持ち出すのは時と場合による、と思います。

オリンピックで考えてみる

金メダルが獲れる?

さて、「諦めずに努力すれば必ず報われる」というセリフを、「オリンピック陸上100mで金メダルを獲る」という具体的な目標で考えてみると、かなり難しそうです。

この場合のいわゆる世界の頂点は1人だけですから、「オリンピック陸上100mで金メダルを獲る」ことを信じている、その為に努力していれば、叶うのか、報われるのかと言えば、何人いようとその中の1人だけが当てはまることになります。

努力の程度の話?

「努力の程度が問題だ」といった話になってくると、もうそれは言葉遊びの域と言いますか、どうとでも言えわけです。才能や運など様々な要素がありますから、「諦めずに努力すれば必ず報われる」というセリフを真剣に伝えるとすれば、伝える対象者は限られると思います。

才能、現状の能力、トレーナビリティ、指導者を含む環境、年齢などを考慮すれば、「諦めずに努力すれば必ず報われる」と軽々しく言えないと思います。その努力は他でした方が良いといったケースはあると思います。

諦めずに努力した人の集まり

「◯◯選手は諦めずに努力したからオリンピックに出場し金メダルを獲得した」のかも知れませんが、少なくともオリンピックに出場する選手は、「諦めずに努力した」はずです。「○○選手が諦めずに努力した結果、金メダルを獲得した」というストーリーであって、「◯◯選手が」という部分は重要で、「誰でも」ではありません。

もちろん、○○選手は特定の選手を指すわけではなく、結果的に金メダルを獲得した選手を指します。ちなみに再度確認しておきますが、あくまで「オリンピック陸上100mで金メダルを獲る」という具体的なケースを例にしたまでで、目標達成の可能性の話です。

臨床で考えてみる

必ず良くなる?

私の仕事で考えると、患者さんが対象者になります。どうしても現在の医学では一定以上の改善は不可能という限界は存在します。「諦めずに努力すれば必ず報われる」と、少なくとも専門職が軽々しく言えるものではないと思います。

「無理なものは無理」なので、それに対して時間と労力を費やすことは、適切でないことが多いと思います。もちろん、それでも努力したいという対象者の想いがあるとすれば、その想いは否定されるものではないと思います。

絶対的な限界というのは存在し、それはどうにもならないわけですが、「本当は改善の余地があるが、それに対して適切に介入出来ない」ことによって、限界とされることもあるかも知れません。

可能性は常に考えておくべき

何でも改善するわけではないのはその通りですけど、何でも改善するわけではないというバイアスが可能性を潰すこともあるということは、常に頭の片隅には置いておく必要があると感じます。

何らかの介入と言っても、専門職による専門的な介入に限ったものではありませんし、改善(便宜的な表現ですが)と言っても心身機能に限らず環境を変えるといったことも含めて考えると、可能性は広がると思います。

折り合いをつけること

例えば入院患者さんだと期限がありますし、早く退院した方が良いこともありますから、その限られた時間を考慮した中で出来るだけ総合的に良い折り合いをつけることが求められます。ですから、「可能性があるから」という理由で、何かに固執して、他の重要な事項がなおざりになることは避ける必要があります。

まとめると、「無理なものは無理」、「可能性を見出して介入する」、「状況を的確に把握して行動する(上手く折り合いをつける)」といったところでしょうか。

まとめ

専門性を磨くこと自体は、専門職の能力によって可能性を潰すことを避けることにも繋がりますので、そのような取り組みを指して「専門バカ」呼ばわりするのは違うと思います。そればかりに固執して状況が把握出来ていないのであれば、それは適切とは言えないわけですが。

専門性を磨くことと、状況を的確に把握して行動する、それらは相反するものではないと思います。対象者にとって役に立つ仕事が出来るように、色々なことを学んで視野を広げることが大事だと考えています。

何でも叶うわけではないけど、可能性と必要性を考慮して、出来るだけ高いレベルの折り合いをつけることが、現実的には重要だと思います。

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