(リ)コンディショニングメモ

主にトレーニング、理学療法、リハビリテーションに関することについて。理学療法士が書いています。

神経科学 運動学習

#67 「運動学習」とは?

2017/12/07

運動学習関連の文献はかなり多くあります。理学療法士においても、運動制御(motor control)と運動学習(motor learning)に関する知識は必須と言われています。そもそも「運動学習とは何か?」ということですが、よく引用されるものとして、Schmidtによる定義があります。

「運動学習」とは?

『運動学習(motor learning)とは、熟練パフォーマンスの能力に比較的永続的変化を導く練習や経験に関係した一連の過程である。』

リチャード A. シュミット:運動学習 概念と方法. 調枝孝治(監訳):運動学習とパフォーマンス, p155, 大修館書店, 1994.

少し分かり辛い表現かも知れませんが、例えば「その時は上手く出来た。けれども、それ以降は上手く出来なかった。」といった場合だと、比較的永続的変化ではないので、学習が生じたと言うことは出来ません。

Schmidtの定義にあるように、『一連の過程』であるため、ある時点を取り出すだけでは、学習が生じているのか、そうでないのかは、わかりません。

ブロック練習とランダム練習を例に

例えば、ブロック練習(1つの練習を繰り返し行う練習)とランダム練習(いくつかの練習がランダムに混ざり合う練習)では、その時はブロック練習の方が、パフォーマンスの成績は良かったが、時間をおいて再び行うと(保持テスト)、ランダム練習の方が成績が良かったといった研究があります。

練習時のパフォーマンスといったように、その時点だけを見るとすれば、ブロック練習の方が「良い練習」と判断しがちかも知れませんが、実際はそうではないかも知れないということです。

これは、ブロック練習、ランダム練習に限ったことではなく、教示、介助、環境、ファシリテーションテクニックによる即時効果などによって、その時点では上手くいっているように見えても、学習が生じているかどうかは別問題となります。

ちなみにですが、「ランダム練習はブロック練習に比べて優れている」とするのは短絡的で、そうではない研究もあります。結局は対象者に合った課題の選択や難易度調整、頻度や順序など様々な変数を調節しながら、如何にして運動学習を図るかを考える必要があると思います。

【参考記事】

#19 「ブロック練習」と「ランダム練習」について

『運動学習の従来の観点は主に個人の変化に焦点を当てていた。しかし、運動学習の過程は、課題と環境を伴う個人の相互作用から明らかになる課題解決の探索であると述べることができる。課題解決とは、知覚し、行動するための新しい方略である(Newell, 1991)』

Anne Shumway-Cook, et al:運動学習と機能回復. 田中繁他(監訳):モーターコントロール 研究室から臨床実践へ 原著第4版, p24, 医歯薬出版株式会社, 2013.

そのように考えると、「その時は上手く出来た」と言っても、「その時」とは、どのような課題、どのような環境、どのような個人の状態であったかなどを考える必要がありますし、練習を行う上でもそういったことは考慮する必要があると思います。

まとめ

まとめると、「この練習で上手くいった」「この手技で良くなった」と言っても、ある時点だけを取り上げても、本当に良くなっているのかは分かりません。

しかし、出来ることを積み重ねていくといった視点や、上手くいった経験がもたらすポジティブな要素もあります。単純に「これをすれば良い」と言えないところが難しいところでもあり、専門性を発揮するところでもあると思います。個人的にはスマートにいくことはなかなかないわけですけど。

【参考文献】

・リチャード A. シュミット:運動学習とパフォーマンス(調枝孝治, 監訳),  大修館書店, 1994.

・Anne Shumway-Cook, et al:モーターコントロール 研究室から臨床実践へ 原著第4版(田中繁他, 監訳),  医歯薬出版株式会社, 2013.

・Magill RA et al:A review of the contextual interference effect in motor skill acquisition. Hum Mov Sci 9:241-289, 1990.

・Newell KM:Motor skill acquisition. Annu Rev Psychol. 42:213-37, 1991.

・Shea JB et al:Contextual Interference Effects on the Acquisition, Retention, and Transfer of a Motor Skill. Journal of Experimental Psychology Human Learning & Memory. 5:179-187, 1979.

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