(リ)コンディショニングメモ

主にトレーニング、理学療法、リハビリテーションに関することについて。理学療法士が書いています。

トレーニング 指導関連 用語の定義 考え方

#6 「ウォーミングアップ」について

2018/01/10

ウォーミングアップとは?

NSCAの本には、ウォーミングアップについて以下のように説明しています。

Thomas R.Baechle,Roger W.Earle 編 金久博昭 日本語総監修 岡田純一 監修:ストレングストレーニング&コンディショニング第3版,ブックハウスHD,2010.

『運動前のウォームアップは重要で、選手に、運動や試合における競技パフォーマンスに対する精神的、身体的な準備をさせることが目的となる』

ウォーミングアップの目的は上記だとすると、その目的を達成するための手段を選択し実行することが必要となります。その手段はこれから行うスポーツやトレーニングなどによって変わってくるでしょうし、それを行う人の特徴やその時の状態によっても変わってくると思います。

運動前のスタティックストレッチ

パフォーマンスを低下させる?

「スタティックストレッチングはパフォーマンスを低下させる」というセリフを見聞きするようになって久しいです。「そういう研究がある」と言えば説得力があるのかわかりませんが、まずそもそも「パフォーマンスって何の?」とか、「どれくらいの強度で、どれくらいの時間をかけると?」といった疑問が出てくることは自然なことだと思います。

実際は研究によって色々あり、パフォーマンスといっても、筋力(活動のタイプも様々)、ジャンプ(種類も様々)、スプリントなど色々ありますし、実施時間や回数も違います。

ウォーミングアップ=スタティックストレッチング?

「スポーツやトレーニング前のスタティックストレッチングは避けるべき」という主張も分からなくはないですが、そもそも「ウォーミングアップ=スタティックストレッチング」という認識を持っている人がいるなら、それはどうかという話で、「避けるべき」という主張はいささか極端だと感じます。

NSCAの本からの引用をもう一度確認します。

『運動前のウォームアップは重要で、選手に、運動や試合における競技パフォーマンスに対する精神的、身体的な準備をさせることが目的となる』

ということで、その目的達成のための手段を用いるということですね。スタティックストレッチングは持続的な伸張によってⅠb抑制を起こすことで、筋緊張を低下させるということを基に考えると、大きな力やパワーを発揮する直前に行うことは確かに目的には合っていないと考えられます。

現場での工夫

必要ならするという考え方

しかし何かしらの理由で特定の筋の緊張が亢進しているケースでは、スタティックストレッチングを行うことが必ずしも不適切であるとは言えないかも知れません。結局は「適切な状態」になるように「準備」するわけですから、「適切な状態」にどのように持っていくかということになります。

スタティックストレッチングだけ行う?

ですから、スタティックストレッチングにしろ、ダイナミックストレッチングにしろ、その他の手段にしろ、「それだけ」を行う必要は全くないわけです。例えば「スタティック→ダイナミック→スタティック→ダイナミック…」という組み合わせも考えられます。

現場では名称はさほど重要ではない

そもそもそういった分類は便宜的な側面もあるわけですから、実際には色々なものを織り交ぜたり、何に分類されるかよくわからないといったことも出てきます。「スタティックストレッチング」を行うこと、もしくは行わないことが目的ではないですし、わざわざ手段を限定する必要もないはずです。

分類してそれぞれの特徴を明確にすることは、手段として適切な選択となり得るかという判断材料になりますから、そういった学術的な分類というのは、もちろん重要なことだと思います。

場面に応じて適切な選択をする

そういった知識を現場の具体的な事例に適応させるという部分は、現場の人間としての能力が問われる部分であり、腕の見せ所と言えるのかも知れません。

身体が冷えていては筋は緊張しやすいわけですから、そのような状態でスタティックストレッチングでじっとしていても、効率的・効果的に筋緊張を低下(適度な筋緊張にする)させることは難しいので、まず身体を温める手段(例えば何かしらの有酸素運動)を行う必要があると思います。

効率良く次の局面に移行する

ただ時間は限られていますから、効率良く次の局面に移行する必要があります。ピッチャーならボールを投げるという専門的なウォーミングアップに移行するでしょうし、リフターなら実際に挙上するという専門的なウォーミングアップに移行すると思います。

まとめ

ある手段が独り歩きしない為にはやはり、その手段の優劣ではなく特徴を理解すること、そもそもの目的を考えること、普遍的なことを理解すること、個別性を考慮すること、そういったことが必要だと考えています。

【参考文献】

・Behm DG,Kibele A:Effects of differing intensities of static streching on jump performance.Eur J Appl Physiol 101:587-594,2007.

・Nelson AG,Driscoll NM et al:Acute effects of passive muscle streching on sprint performance.J Sports Sci 23:449-454,2005.

・Little T,Williams AG:Effects of differential streching protocols during warm-ups on high-speed motor capacities in professional soccer players.J Strength Cond Res 20:203-207,2006.

・Ryan ED,Beck TW at al:Do practical durations of streching alter muscle strength?A dose-response study.Ned Sci Sports Exerc 40:1529-1537,2008.

・Sekir U,Arabaci R at al:Acute effects of static and dynamic streching on leg flexor and extensor isokinetic strength in elite women athletes.Scand J Med Sci Sports 20:268-281,2010.

・Siatras TA,Mittas VP et al:The duration of the inhibitory effects with static streching on quadriceps peak torque production.J Strength Cond Res 22:40-46,2008.

・Thomas R.Baechle,Roger W.Earle 編 金久博昭 日本語総監修 岡田純一 監修:ストレングストレーニング&コンディショニング第3版,ブックハウスHD,2010.

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