(リ)コンディショニングメモ

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運動学 指導関連 用語の定義

「良い姿勢」の基準は色々ある

2018/08/22

「姿勢が良い」「姿勢が悪い」という話は、日常的な会話のレベルでも聞かれることがあります。この姿勢が「良い」「悪い」という基準は何かということになると、ばらつきがあるように思います。

良い姿勢と悪い姿勢の判断基準

よい姿勢、わるい姿勢を判断する基準は、どのような視点に立ってみるかによって異なる。力学的には姿勢の安定性、力の効率などが問題になり、形態学的には脊柱、四肢の骨格、関節や筋の構造など、神経学的には神経筋の活動など、運動生理学的には疲労、循環やエネルギー代謝など、心理学的には性格、心理状態などが取り上げられる。美学からは、プロポーションや表現様式などが中心になる。同じ姿勢であっても、それぞれの視点によって、姿勢には異なる意義があり、それにしたがって理解され、評価される。

中村隆一他:基礎運動学 第6版, 339. 医歯薬出版株式会社, 2007.

このように、それぞれが完全に独立したものではなくとも、どの視点で姿勢を捉えるかによって違ってくるということになります。例えば美学的な視点などは、観る人によってかなり個人差が大きいかも知れません。

視点によって違う

「姿勢改善」とひとことで言っても、どの視点で考えるのかということになります。例えば、「良い姿勢で立って下さい」と指示されても、いわゆる健常者であってもばらつきがあるはずです。

それは、「良い姿勢」のイメージがそれぞれ違うこともあるでしょうし、その人の持つ「良い姿勢」のイメージを再現出来ない(しているつもりだが差異がある)ということもあると思います。一方、指導者は基本的立位姿勢のアライメントを基準に考えることもあると思います。

姿勢と言っても、立位だけでは当然ありませんし、動的な姿勢、静的な姿勢といった分類も出来ます。「姿勢改善」を考えた時に、その「改善」という変化が、どのような恩恵をもたらすのか、反対に言えば何のために変えるのかという目的があるはずです。

その姿勢になっているのには理由があるはずで、「理想的とされるアライメントに近づけること」に目を奪われると、その変化が他にどのような影響を与えるのかという部分が見えなくなるわけですから、予想もしかなった変化を後追いで対処することになるかも知れません。

習慣を変えることは容易ではない

普段の姿勢を見直して、適宜何かに取り組んでいる人はそう多くはないと思いますし、一日中、自身の姿勢に注意を向け続けることは困難ですから、姿勢に関しては無意識的な部分が大きいところです。

それを意識的に変化させようとすると、やりようだと言えばそうかも知れませんが、違和感が出てきてもおかしくありません。普段の姿勢と違うということは、注意の向け方も、身体の使い方も違うわけですから、局所的な疲労感などが出ることもあると思います。

そういったことを予測していれば、最初から大きな変化を求めないだとか、基本的立位姿勢のアライメントだけでなく、その他の静的、動的姿勢に対しても並行して介入することが出来るかも知れません。

例えば、基本的立位姿勢を整えるだけで、他の姿勢ではそれを打ち消すような姿勢や動作になっていれば、狙った結果を望むことは難しいかも知れません。

最初に引用した文章を参考に考えてみると、姿勢を変えるということは、力学的、形態学的、神経学的、運動生理学的、心理学的、美学的に変化が生じる可能性があるわけですから、「ただ理想的とされるアライメントに近づけること」を目的にするのは、歯車を狂わせるだけになる可能性も考えられます。

ただ、基本的立位姿勢の理想的なアライメント(「乳様突起ー肩峰ー大転子ー膝関節中心のやや前方ー外果の前」という指標が前額面で垂直線上にあるといった基準)は、最初に引用した様々な視点で観ると、多くは良い姿勢に当てはまりそうだと考えることも出来ます。

ですから、それに近づけること自体を否定するわけではありませんが、何らかの理由でそれが困難であったり、それが対象者にとってベストとは言えないこともあります。

まとめ

「これが理想的なアライメントだ」として、対象者の状態を考慮せず、目的を考えず、対象者に当てはめようとしても仕方ありません。個別性を無視して無理矢理当てはめようとしても、対象者にとっての利益はないばかりか、不利益を被る可能性もあります。

そもそも最初から、例えば「円背だから姿勢を変えるべき」とはならないはずで、そこにはそもそもの目的があるはずです。円背姿勢がその対象者にとってどのような意味があるのか、それを変えた方が良いと考える根拠は何か、本当に適切に姿勢を変えることが出来るか、といったように対象者の個別性を考慮する必要があると思います。

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